漢方ブログ
和歌山で「眠れない」
お悩みの方へ。
漢方の専門家が教える
〜不眠の原因と体質別改善法〜
1.「眠れない」
不眠の方が増えています。
今日は早く寝たいなと思ってベッドに入るけど、眠れない・・・ついついスマホを見てしまう・・今日あった出来事や明日の仕事や家事のことを考えてしまう・・
このような「眠れない」というお悩みが増えています。 現代社会において、多くの方が睡眠に関する何らかの不調を抱えています。東洋医学、特に漢方の世界では、不眠は単に「脳の興奮」や「精神的な問題」として片付けられるものではなく、心と体のバランスが崩れていることを示す、体からのメッセージなのです 。
和歌山市にあるCOCO漢方薬局が、そのお悩みに漢方の視点から少しお話します。この記事では、なぜ眠れなくなるのかという根本的な原因を東洋医学の観点からお話しし、ご自身の不眠がどのタイプに当てはまるのか、そして体質に合わせた漢方薬による改善法や、今日から始められる生活習慣の工夫まで、包括的な情報をお届けします。
この記事が、眠りたいのに眠れないあなたにとって、健やかな眠りを取り戻すための一助となることを願っています。

2.西洋医学と東洋医学
不眠へのアプローチの違い
不眠という一つの症状に対しても、西洋医学と東洋医学ではその捉え方と治療へのアプローチが大きく異なります。それぞれの長所を理解することは、ご自身に合った改善法を見つける上で非常に重要です。
西洋医学では、不眠の原因を特定するために、まず心理的なストレス、身体的な病気、生活習慣の乱れなどを診察で確認します。治療法としては、睡眠導入剤(睡眠薬)を用いて、脳の働きを鎮静化させ、強制的に眠りを誘発することが一般的です。この方法は、特につらい急性期の不眠に対して迅速な効果が期待できる一方で、薬への依存や副作用、そして「薬で眠らされている」という感覚から、根本的な解決に至らないと感じる方も少なくありません 。
一方、東洋医学、すなわち漢方のアプローチは根本的に異なります。漢方では、人間の生命活動を支える根源的な要素として、気(き:身体活動エネルギー)、血(けつ:血液とその働き、栄養)、津液(しんえき:血液以外の体液)の三つが過不足のない状態で、体内を滞りなく巡ることで、心身の健康が保たれると考えます 。
不眠は、この気・血・水のバランスが何らかの原因で崩れた結果として現れる症状の一つと捉えるのです。特に、感情のコントロールや自律神経を司る肝(かん)、精神活動や意識を司る心(しん)、そして食事からエネルギー(気)や栄養(血)を生み出す脾(ひ)の機能失調が、不眠に深く関わっているとされます。
西洋医学の睡眠薬は、強制的に睡眠を誘発させるのに対し、漢方薬は、眠りを直接誘発するのではなく、不眠の原因となっている体の不調和、例えば過剰な興奮(熱)を冷ましたり、不足しているエネルギー(気)や栄養(血)、体を潤すための体液(津液)を補ったり、気の滞りを解消したりすることで、体が本来持っている自然な眠りの力を取り戻す手助けをするのです。

3.あなたの不眠はどのタイプ?
漢方で考える4つの睡眠障害と原因
不眠と一言でいっても、その現れ方は人それぞれです。漢方治療では、まずご自身の不眠がどのタイプに当てはまるかを見極めることが第一歩となります。ここでは、医学的に分類される4つの主要な睡眠障害のタイプと、それぞれが漢方医学的にどのような体のサインと結びついているのかを解説します 。
現代生活における様々な要因が、古くから伝わる漢方の概念と深く結びついている点にも注目です。例えば、就寝前のスマートフォンの使用は、その光の刺激が脳を覚醒させますが、漢方ではこれを「熱」を生み出し、心をかき乱す原因となったり、目を酷使することで睡眠のために必要な肝の力を弱めてしまいます。また、仕事のプレッシャーによる心身の消耗は、生命エネルギーが枯渇した虚労(きょろう)という状態そのものです。ご自身の生活を振り返りながら、どのタイプに近いか考えてみましょう。
3.1 入眠障害
床についてから30分~1時間以上、時には数時間も寝付けない状態です。
3.1-1「イライラして眠れない」
イライラして眠れなかったり、また眠れないことにイライラしてしまうタイプです。布団の中でもじっとしていることが難しく、寝返りをたくさんうったり、布団から出て起きて掃除などし始めてしまうタイプ。
▶︎漢方的な原因
このタイプの不眠は、肝の昂ぶりと関連が深いとされます。ストレス、興奮、イライラなどによって交感神経が過剰に高まってしまっている状態です。
3.1-2「考え事をして眠れない」
普段の不安や悩みが頭を巡って眠れない状態です。眠れなくてもじっとしていて布団の中でずっと考えているタイプ。たまに動悸があることも。
▶︎漢方的な原因
このタイプの不眠は、心と脾(胃腸)の弱りと関連が深いとされます。
3.1-3「なんとなく眠れない」
イライラや悩み事とかもないけど、なんか寝れない。寝れないからといってまたイライラしたり不安がでたりすることもなく、時間が過ぎていくタイプ。
▶︎漢方的な原因
このタイプの不眠は、肝の疲れと関連が深いとされます。睡眠にはある程度、肝の力が必要となります。肝が疲れてしまって肝の力が弱いと眠りに入ることができません。「体力がないと眠れない」というのを聞いたことがありませんか?この状態がそうです。
3.1-4「体がほてって」
体がほてったり、少し熱をもっていて暑くて眠れないタイプ。睡眠時は少し体温が低めになることで入眠しやすくなります。体温が高いままだと入眠が困難になることがあります。
▶︎漢方的な原因
このタイプの不眠は、体に熱が多かったり、体を冷やすための体液が不足していることに関連が深いとされます。また、寝る前に筋トレや運動をすることで体温をあげてしまうことも原因となります。
3.2 中途覚醒
「夜中に何度も目が覚める」
一度は眠りについても、夜中に何度も目が覚めてしまう。ささいな物音や尿意ですぐに目が覚めてしまうこともあります。
▶︎漢方的な原因
これには複数の原因が考えられます。一つは、夜眠るための血液や体液が十分に足りていないことです。しっかりした睡眠をとるためには血液や体液が必要となります。これが足りていないと深い眠りにつけなかったり、朝まで眠る事ができなかったりします。もう一つは、血液の流れが悪い状態です。血液の新陳代謝は夜中に行われますが、その時にきちんと巡る事ができないとその時間に目が覚めてしまうことがあります。
3.3 早朝覚醒
「予定よりずっと早く目が覚め、二度寝できない」
起きようと思っていた時刻より2時間以上も早く目が覚めてしまい、その後眠ろうとしても眠れない状態です。睡眠時間が足りず、日中に強い眠気を感じることがあります。
▶︎漢方的な原因
加齢に伴う心身の変化や、慢性的な疲労によって気や血が消耗している状態(虚証)で多く見られます。特に、生命活動を支える肝や心の機能が低下し、睡眠を維持するためのエネルギーが不足していることが考えられます。体が睡眠を持続させるだけの「燃料」を失っている状態です 。
3.4 熟眠障害
「時間は寝ているはずなのに、疲れが取れない」
睡眠時間は十分に確保できているにもかかわらず、ぐっすり眠れたという満足感がなく、朝起きても疲れが残っている状態です。夢ばかり見て眠りが浅いと感じることもあります。
▶︎漢方的な原因
これは、心身が極度に疲労した虚労(きょろう)や、気の巡りが滞る気うつ(きうつ)の典型的なサインです。エネルギー(気)や栄養(血)が著しく不足しているため(気虚・血虚)、睡眠中に体を十分に修復・回復させることができません。エンジンは停止していても、メンテナンスが行われていない状態に似ています。
4.今日からできる
質の高い睡眠のための生活養生
4.1 イライラ・興奮タイプ
このタイプの方は日中や寝る前に気分転換になることをしたり、香りのいいもの(ハーブティーや香水など)でリラックスすることが大切です。 イライラしている場合には、そのイライラをノートに書き出すことも心が落ち着いていきます。また、体に熱がたまりやすく、熱があることでも眠りにくくなるので、少し冷たいもので体温を下げてあげることもいいかもしれません。
4.2 不安・くよくよタイプ
このタイプの方は今ある不安をノートに書き出すようにしましょう。また、脾(胃腸)が弱っているとクヨクヨ悩んでしまいやすくなるため、脾(胃腸)に負担をかけないことも大切です。しっかり噛んで食べる・食べすぎない・水分をとりすぎないなども気をつけるといいです。
4.3 なんとなく眠れないタイプ
このタイプの方は体も心も疲れてしまっています。どちらも休めてあげることが大切です。体に対しては、昼寝もおすすめです。心に対しては、「心も疲れてる」と自覚をして、無理をしないように気持ちも休めてあげるように心がけましょう。
4.4 体がほてるタイプ
このタイプの方は少し冷やして、体温を下げてみてください。根本的なところは体液不足なので、普段から体液を補うようなオクラ・納豆・山芋・蜂蜜などのネバネバした食べ物をとったり、蜂蜜レモンや梅ジュースを取り入れるといいです。また、ほてるだけでなく、体中が熱い時には、しっかりと冷やしてあげると眠りやすくなります。
5.東洋医学でも大切な睡眠の習慣
5.1 体内時計を整える
人間の体には、約24時間周期でリズムを刻む「体内時計」が備わっています。このリズムを整えることが、自然な眠りの第一歩です。
・起床・就寝時刻を一定に
週末の夜ふかしや休日の寝坊は、体内時計を乱す最大の原因です。平日・休日を問わず、できるだけ同じ時刻に起き、同じ時刻に寝る習慣を心がけましょう。
・太陽の光を浴びる
日中に太陽の光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜の自然な眠りにつながります。しっかり太陽の光を浴びるようにしたり、軽い運動をすることも大切です。
5.2 入浴で心身をリラックス
就寝前の入浴は、心身の緊張をほぐし、スムーズな入眠を促す効果的な方法です。 ぬるめのお湯にゆっくりと: 就寝の2時間ほど前に、38~40℃くらいのぬるめのお湯に25~30分ほど浸かるのが理想的です。入浴で一時的に上がった深部体温が、就寝時に下がっていく過程で、強い眠気が誘発されます 。
5.3 夕食と飲み物の注意点
就寝前の食事や飲み物は、睡眠の質に直接影響します。
・就寝3時間前までに食事を終える
胃の中に食べ物が残っていると、消化活動のために体が休息モードに入れず、眠りが浅くなります 。
・カフェイン・アルコールを避ける
コーヒーや緑茶に含まれるカフェインは覚醒作用があるため、午後の摂取は控えめに。また、寝酒は寝つきを良くするように感じますが、利尿作用や覚醒作用により、夜中に目が覚める原因となり、睡眠の質を著しく低下させます 。
5.4 光のコントロール
光、特に現代の生活に欠かせない電子機器の光は、睡眠に大きな影響を与えます。
・夜は暖色系の光で過ごす
夜間は部屋の照明を少し落とし、暖色系の穏やかな光の中で過ごしましょう。
・就寝1時間前はデジタルデトックス
スマートフォンやパソコン、テレビなどが発するブルーライトは、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌を抑制します。就寝前の1時間はこれらの画面を見るのをやめ、読書やストレッチなどリラックスできる時間にあてましょう。
6.和歌山COCO漢方薬局の
個別カウンセリング
ここまで不眠のタイプについて解説してきましたが、和歌山にあるCOCO漢方薬局では、お客様一人ひとりとの個別カウンセリングを最も大切にしています。当薬局は完全予約制で、落ち着いた空間の中、専門の漢方薬剤師がじっくりとお時間をかけてお話をお伺いします。
不眠という症状だけでなく、お客様の生活習慣、食事、仕事の環境、ストレスの感じ方、あらゆる角度からお悩みの背景を深く理解しようと努めます。舌の色や形を見たり(舌診)、脈の状態を診たり(脈診)といった東洋医学ならではの診察方法も用いながら、あなたの証を正確に見極めます。
和歌山市太田にある当薬局の目的は、単に不眠に効く薬をお渡しすることではありません。あなたの不眠の根本原因を突き止め、あなたの体質に完璧に適合するオーダーメイドの漢方薬をご提案し、さらには生活養生のアドバイスを通じて、あなたの体が本来持っている「自ら治る力(自然治癒力)」をそっと後押しすることです。その結果として、しっかりとした睡眠をとることができ、毎日が元気でいられるようになること、それが私たちの目指すゴールです。

まとめ
この記事では、漢方の視点から見た不眠の原因と、その改善法について詳しく解説してきました。最後に、重要なポイントを改めて確認しましょう。
不眠は体のバランスの乱れのサイン
眠れないのは、単なる精神的な問題ではなく、気・血・水の乱れや、肝・心・脾といった臓腑の機能失調が原因で起こる、体からのメッセージです。
根本原因にアプローチし自然な眠りへ
漢方薬は睡眠薬のように強制的に眠らせるのではなく、体の不調和を整えることで、人が本来持つ自然な睡眠リズムを取り戻すことを目指します。
あなたの「眠れない」には、必ず理由があります。和歌山市で不眠のお悩みを根本から解決したい方は、ぜひ一度、COCO漢方薬局にご相談ください。あなたの心と体が安らぐ夜を取り戻すお手伝いをいたします。
